「忖度」の本義

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あれ? 治五郎さんよ、タイトルと写真は少し話がズレてないか? と疑う読者がいるかもしれない。まあ、お聞きなさい。

読み方も知らない人が多かった「忖度」が、今は流行語大賞の有力候補になっているらしい。忖度とは「自分なりに考えて、他人の気持をおしはかること」(新明解国語辞典)で、下線部分は新解さんならではの緻密な解釈だ。

しかし「首相官邸(のエライ人)は自分じゃ言えなくても、こう望んでいるに違いない」と「おしはかる」のは忖度だろうか。そのエライ人に気に入られたいという下心が透けて見えるので、これは忖度というより「計算」だと思う。

写真左の人物を知らない国民はいないが(実は案外、いるもんだよ)、右の女性もアッという間に全国で有名になった。中年男性秘書に対する「このハゲ~!」以下の暴言は、テレビが四六時中流すもんだから耳にこびりついて離れない。梅雨の代わりにジメジメした鬱陶しい気分を味わうことになった。

そっと録音して週刊誌に持ち込んだ元秘書は、褒めていいのか憐れんでいいのかよく分からないが、豊田真由子さま(自称)は録音記録によって完全に逃げ場を失った。自業自得とはいえ、あそこまで人格が出てしまった肉声を暴露されれば弁解のしようはなく、病院以外に隠れる場所はないだろう。本人や周囲の現況を詮索する情報がネット上に氾濫しているけれども、治五郎の気になっていることは……。

真由子さま(あくまで自称) の子供たちは、いじめに遭っているのではないか。ミュージカル調で「♪私に嫌われた人は~、一体どうなるのかな~」的なことを言われてやしないか。さらに想像を逞しくすれば、かつて真由子さま(自称だってば)に1票を投じた人々の「心のケア」は大丈夫だろうか? 「ブームに乗せられて、あんな人物を政治家にしてしまった一人である私に生きる価値があるんだろうか」。ま、そこまで思い詰める有権者はいまいが、自己嫌悪にさいなまれる支持者(元)ぐらいはいてもいい。

忖度という言葉は本来、自分の利得・損得勘定とは無縁なところで「(自分と関係があろうがなかろうが)相手や他人様が今どんな気持ちでいるのか、どうしても考えてしまう」という心事を表していると思う。

それはともかく録音・録画が政治家その他の職業生命を一瞬で奪う時代になった。都議選で圧勝した小池都知事が、雨後のタケノコみたいな初当選の〝小池チルドレン〟に「人前で発言する時は録音されていると思って」と注意したのは正しい。文春とか新潮とか具体的な誌名は言わないが(言ってるよ)、彼らも仕事だから今夜も不祥事やスキャンダルの発掘に命を削っている。近々、また何か出て世を騒がすのだろう。