熱中症とニッポンの不思議

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中高年の人にお尋ねしたいが「熱中症」なんてもの、昔はありましたか? 「暑気当たり」とは言ったし、ちょっと言葉を工夫する母親なんか「うちの子は最近、鉄腕アトム熱中症でして」などと言ったかもしれないが、熱中症という言葉がこんなに幅を利かせるようになるとは思わなんだ。

連日、テレビが「こまめに水分を補給して熱中症対策を」「室内でも適度の冷房を忘れないで」と呼び掛けている。少しヘンではないだろうか。

地球温暖化は昨日や今日の話ではなく、日本ではクソ熱い日が大昔からあった。冷房どころか扇風機もない時代が何千年も続いてきたはずだが、暑さで毎日たくさんの人が死ぬようになったのは、一体なぜなのか?

国を挙げて水分補給、水分補給と言うもんだから、見なさい。今や日本全国、どこも飲料水の自動販売機=写真=だらけだ(しかも利用者の多いこと)。ニッポンよりも暑い国はたくさんあるが、こんな国、ほかにないよ。

夏の炎天下を毎日テクテクテクテク、4里も5里も歩き続けた「奥の細道」の芭蕉翁は一度も熱中症になった形跡がない。帽子をかぶらず200メートル先のスーパーに行く途中で一瞬、足元がフラつき「あ、来たかな?」と脅えた治五郎などは「日本人もいよいよ体がダメになってきたなあ」と実感させられるわけである。