一筋縄では行かないモンゴル語

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ご存じ、チンギス・ハーンであります。以前の日本ではジンギスカン(成吉思汗)と呼ぶのが一般的で、羊肉の人気料理を創案した人物として有名だ。(少し違います)

この名前をモンゴル語で表記するには、上のような二つの方法がある。一つは縦書きの伝統的モンゴル文字(右)で、寝癖のついたあご髭みたいだから俗にヒゲ文字という。もう一つは、横書きのロシア式キリル文字(下)である。

似ても似つかぬ両者の字形は、漢字と平仮名の違いなどとは次元が違う。治五郎の場合、キリル文字の方は読めるが、ヒゲ文字には全く歯が立たない(というか、実はもう大半が入れ歯だから立てるべき歯がない)。

モンゴル国1920年代の社会主義革命でソ連(当時)の影響下に入った(というより属国になった)ため、伝統文字を捨ててキリル文字を使う(使わせられる)ようになる。

1990年前後からの自由化で、昔の文字や宗教(チベット仏教)を取り戻そうという機運が高まったのだが、なにしろ70年もたっているので、宗教はともかく文字については時すでに遅し。よほどの高齢者か、意識的に猛勉強した人以外は読み書きできない。

ここで大相撲ファンにクイズを出そう。次の外国人力士の中で、モンゴル古来のヒゲ文字をちゃんと読み書きできる(はずの)人は誰か?(カッコ内は出身国)

白鵬(モンゴル) ②日馬富士(同) ③鶴竜(同) ④蒼国来(中国)

正解は、④なんですよ。中国・内モンゴル自治区出身の蒼国来は、国籍は中国でも民族上は正真正銘のモンゴル人だ(そこが、あの大国の難しいところ)。彼も学校では中国語と漢字(簡体字)を教えられたが、家では古来のモンゴル語で育った。

蒼国来の所属する荒汐部屋の飼い猫「モル」が最近は〝スー女〟たちの人気者で、写真集まで出ているそうだが、モル(モール)はモンゴル語で「猫」の意そのものだ。

いろいろ知ったかぶりを申しました。3横綱の中に万が一「俺は、モンゴル文字をスラスラ読み書きできるよ」という人がいたり、蒼国来関が実は読めなかったりした場合には菓子折りを携えて〝誤報〟の謝罪に伺います。(菓子折りではなく羊の内臓か脳みそを携えたいのですが、なかなか東京では手に入らないのです)