騙される人、騙されない人

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A「おっ、三船敏郎だ! 懐かしいな。まだ生きとったのか」

B「ちょうど20年ぐらい前に亡くなったよ。確か1997年だ」

A「じゃ、なんで今ごろコマーシャルに出てるんだ?」

B「これは50年以上も前の映画『赤ひげ』の一場面だ。きっと映像に細工を施したんだろう。最近はそういう合成技術が長足の進歩を遂げているからね」

A「何か飲んでるぞ。サントリーの『胡麻麦茶』だって。そんなもん、赤ひげ先生は飲んでたかなあ。それに全体は白黒なのに、飲み物にだけ色がついてる」

B「ああ、それは黒沢明監督が『天国と地獄』でやってみせた手法なんだ。当時は驚かれたが、今はもう不思議でも何でもない」

A「一緒に出てる男は誰だ? 加山雄三じゃないよなあ、すっかり禿げてるし」

B「それは高橋克典。いや、高橋克己」(正しくは高橋克実

A「三船は声も昔のままだ。『旨い! これで皆も喜ぶことだろう』か・・・うん、確かに赤ひげ先生のセリフに、そういうのがあった」

B「あったかなあ。少なくとも、血圧130を超えると高血圧だ云々の話は映画には出てこなかったが」

 

世間ではAのような人を「天然」と呼び、Bタイプを「知ったかぶり」と言う。二人でそれなりに盛り上がっているところへ、C(30代、独身、♀)が加わった。 

C「あれはソックリさんを起用してるのよ。て言うか、中年イケメンを連れてきてソックリにメイクするわけ。この人は増田雄一というモデルさん(♡)。合成技術じゃなく彼とメイキングと演出を褒めなきゃ」「・・・」「・・・」(AもBも絶句)

白状すると、治五郎は騙されかけておった(知ったかぶりのBというのがワシです)。先日の検査では血圧が130を超えたので、コンビニに入るとつい胡麻麦茶が目に入る。CM製作者にとって、騙されやすい人間ほど「いいカモ」はいないのだ。