軽い機敏な仔猫何匹いるか

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トマトと新聞紙(しんぶんし)の共通点は何か?

そう、上から読んでも下から読んでも同じという「回文」になっていることだ。小学生の子供がいる人は、作らせてみるといい。「ダンスが済んだ」や「マカオのおかま」ぐらいは、たちどころに作ってみせるだろう。

あの親切な(というか、お節介な)新解さん新明解国語辞典は、実例を挙げないと気が済まない性格なので「逆さ・田植え歌・たけやぶやけた」を載せている。

言葉遊びというものは、何時間でもタダで楽しめる。治五郎は昔から、趣味を問われれば「言葉遊び」と答えてきた。いい大人がバカバカしい、と感じる人は、ちょっと席を外していて下さい。(ゴルフでもカジノでもやってくればいい)

コピーライターの土屋耕一(1930~2009)という人は、往年のヒット作「おれ、ゴリラ。おれ、景品」「君のひとみは10000ボルト」などで知られるが、達意の回文作者としても鳴った。

「軽い機敏な仔猫何匹いるか」は、彼の傑作の一つ。これを題名にした回文集を出版していて、「新幹線沿線監視(しんかんせんえんせんかんし)」なんて作品もある。読んで感服したワシは、彼の生前に一度〝表敬取材〟に行ったことがある。

「電車の中でもトイレの中でも、回文をひねくり回しています」と語っていた。ドリンク剤だったか焼肉関係だったか失念したが「スタミナみたす」というコピーなども、そんな場所で生まれたという。回文というのは、究極の「遊び」の世界なのだ。

なに、ゴルフ組とカジノ組が帰ってきた? いいよ帰ってこなくても。