新聞とマンション

f:id:yanakaan:20180103060540j:plain ©植田まさし

兵庫県だかで、住民同士の挨拶をやめようと取り決めたマンションがあるという。子供に「知らない人から挨拶されたら、逃げなさい」と教えている親たちの要望が通ったんだそうだ。恐ろしい時代になったものである。

治五郎のマンション(賃貸の1DKですが)は、まだそこまでは行っていない。2階のH川さん(70、♀)や5階のS藤君(倉庫会社勤務)とは、よく立ち話をする。

11世帯のうち、ワシを除けばすべてが一人暮らし。(ワシはH川さんに次ぐ高齢で1階に棲息しているので、よく管理人と間違われる)

ワシ以外に新聞を購読している人は、ゼロだ。読売新聞=絵は連載漫画「コボちゃん」=の印刷工場が近いこともあって、朝刊も夕刊も3時過ぎには配達される。配達員によると「他紙も含めて、新聞を読む人の入居は久しぶり」だという。いやはや。

新聞離れは、ネットの普及が大きな原因と言われる。どの新聞にも載るようなニュースは大体、印刷・配達される前にネットで読める。ワシも、A紙やM紙やスポーツ紙の主だった記事はネットで読んでいる。

そもそも日本の人口が減りつつあって、「親の代から〇紙を読んでいるから」と慣性で取り続けてきた高齢者は次々と〝お迎え〟が来て消えていく。新聞各社は「子供のうちから新聞を読む習慣をつけてもらおう」と知恵を絞り、それなりの成果は見られるようだが、全体の流れは押しとどめるべくもない。

速報性ではテレビやネットに全く敵わない新聞の値打ちは、まず「一覧性」だろう。パッと開けば「大体のことが視覚的に把握できる」のだ。しかし、特ダネや優れた解説・コラムなどはネットで公開してタダ読みされちゃ、やはりアレ(損)だから公開したくない。そこに新聞のジレンマがある。

多事多難な時代が加速する新聞業界。OBとしては気が揉めるけれども、やむを得なければ即ち仕方がないのであった。