「アル中ハイマー」(©山田風太郎)に関する留意事項

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この言葉、もちろん「アルコール中毒」と「アルツハイマー病」を合体させた造語である。非常に分かりやすい表現で、医師による臨床報告も増加の一途をたどっているので「あ、俺のことだな」と直感する患者が多くなってきた。

治五郎もその一人で、当然のごとく自称として用いたくなるのだが、この言葉に実は著作権者がいる。先日来、ワシが奇書「人間臨終図巻(中)」を再読している作家の故・山田風太郎だ。

伊賀忍法帖」や「魔界転生」など荒唐無稽といえば荒唐無稽、エログロといえばエログロな娯楽小説の大家で、男性には今でも愛読者が多そうだが、ワシは女性ファンに出会ったことがない。(いたら会ってみたいが、少し危険な感じもする)

「戦中派不戦日記」が素晴らしかったし、老境に至って書いたエッセー「あと千回の晩飯」もワシには忘れがたい。「死」というものを忌避せず、素直に向き合っていると思えるのだ。「人間臨終図巻」は、そんな死生観の産物である。

では、彼が名乗った「アル中ハイマー」とは、どういうものか?

深夜というか未明というか、午前2時35分に目が覚めたとしましょう。ちょっとだけ酒が足りなかったと見えて、寝直そうと思っても寝つけない。フラッと起き上がり、推定120メートル先の「100円ローソン」に向かう。

もう飲み直す気はない。ただ、少~し足りないのだ。チューハイが1本あればいい。

人通りのない夜道を120メートル、徘徊する。どうしようもない本能に導かれているだけで、確たる目的意識はない。これが本来の「アル中ハイマー」である。

店に着いた。なんだっけ? あ、チューハイだった。ビールだと問題が解決しないので、いつものチューハイ(税込141円)=写真=を1本。(アルコール度は9%。ロング缶でないと、やはり問題は解決しない)

再び言うが、これが「アル中ハイマー」の正しい姿なのである。