訃報のフライングは、いかんよ

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時事通信社は19日、俳人文化功労者金子兜太(とうた)さん(98)が死去したという誤った記事を配信し、約1時間後に記事全文を取り消した。>=読売新聞20日付

<俳壇の重鎮で戦後の前衛俳句運動をリードした、文化功労者俳人金子兜太(かねこ・とうた)さんが20日、急性呼吸促迫症候群のため死去した。>=同21日付

 どういうことかと言うと、時事通信は犯してはならない訃報の〝フライング〟を犯してしまったのだ。業界用語では「殺しちゃった」と言う。おそらく金子兜太さん=写真=の容体は、誰からも一両日が山場と思われるような状況だったのだろう。

時事通信にとっては不運なことに、そこへ間違った情報が飛び込んできた(詳細な経緯は未詳)。本来は100%間違いないというウラを取るのが記者の鉄則なのだが、「確認が不十分でした」では済まされない結果を招いてしまった。社の幹部が詰め腹を切らされることになるだろう。

しかし治五郎には、金子さん自身がこう言っているのが聞こえるような気がする。「1日ぐらい日付を間違えたぐらいで、そうガタガタ騒ぐこたあない。98まで生きれば、そんな細かいことはどうでもよくなるもんだよ、ハハハ」

それというのも、ワシは9年前、89歳だった金子さんにロング・インタビューをするため、埼玉県熊谷市の自宅に4回ほど通ったことがあるのだ。

俳壇の大御所に対して、こっちは俳句の門外漢。聞き書き「時代の証言者」という企画は今も続いているが、400字詰め原稿用紙に換算して約3枚分の原稿をほぼ毎日、30回近く連載するのは結構な力技で、大過なく終わった時はグッタリしていた。

「私が顔も体形も似ていた母親は、104歳まで生きた。同じくらいまで行けるんじゃないか、と実は思ってるんだ」と磊落に笑った顔が思い出される。

お悔みは申しません。満足してるでしょうから「おめでとう」と申し上げます。