自動販売機とネコババ

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よく知られているように、落語の三遊亭小遊三師匠(71)=写真=の趣味は自動販売機の下に落ちている小銭の収集である。賽銭箱の中身や駅前の放置自転車なども、よく狙われる。

というのは冗談で、これは本人が作り出したキャラクターに過ぎない。治五郎も今宵、師匠の芸について一席ぶちたいわけではなく、まあ、話の枕である。

ネコババは猫糞と書くようだ。

【猫糞】拾った物などを、そのまま自分の物にして、知らん顔をすること。「-をきめこむ」

自販機の釣銭を受け取ったら何十円か多すぎるということが、たまにある。名探偵ジゴローの推理によると、たとえば「ポッカのコーヒー」を120円で買い慣れた人が、たまたま100円で売っている自販機に遭遇すると、120円を投入して余計だった20円の釣を取り忘れるから、こういう事態が生じる。

次の人(ワシ)が100円のポッカコーヒーを100円で買う。商品は手に入った。ところが、この人(ワシ)は釣の有無を確認する性癖がある。「あれ? 20円あるな」

君 笑ひ給ふことなかれ。(ラッキー♡)と自分の財布に入れる貧しい庶民の、ささやかなささやかなネコババ咎めだてする資格が一体、誰にあるというのか!

ところが先夜、マンション横に設置してある自販機の前に千円札が落ちていた。シワひとつない新札だ。昔で言えばテレビの「どっきりカメラ」、今で言う「モニタリング」(TBS)が仕掛けたワナではないかと一瞬、疑った。

思えば、自販機の故障で100円、200円の損をした経験が過去に何度もある。苦情を言う連絡先は機械に明記してあるものの、普通は(面倒だから)泣き寝入りだ。

「積年の恨みが、これで晴れる!」と、思い切って1000円を堂々と(隠しカメラがないのを確認したうえで)ネコババした治五郎であった。(しかし「金は天下の回り物」と言うには、あまりにスケールの小さい話だなあ)