取り分けて相性のいい岡山県

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予告してしまったので、読者の迷惑を省みず始めるしかない。「どうも、治五郎と性が合ってしようがない県」シリーズの第1回。

長崎県沖縄県 ③北海道・・・と順当に進めていきたいところだが、その前に特別枠として「岡山県」がある。写真左をご覧なさい。岡山名物「大手饅頭」です。

「え? 治五郎は甘いものは苦手だろう」「はい」「シュークリームだけは好きだとか聞いたが、アンコを使った和菓子も好きなのか」「はい・・・いえ!」

結果として人を死なせた被疑者が、取調室で殺意を否認する場面を想像させる。「ホントのところを言えよ。言えば家に帰れるんだ」。かくて冤罪は生まれる。

 大手饅頭は東日本では知名度が低いが、岡山県人で知らない人はいない。わが〝文章の神様〟内田百閒は、郷里の岡山に複雑な愛憎を抱いていて終生、ちゃんと帰郷したことは一度もないのだが、大手饅頭だけは夢に見るほど好きだった。

ワシの岡山通いは、もちろん百鬼園先生のお導きである。彼の生家跡に立ってみたくて初めて岡山駅に降り立った日、桃太郎像=写真右=の出迎えを受けた。ちぇっ、岡山は桃太郎の古里だったか。

(平和を愛するワシは、昔話の「桃太郎」が嫌いである。犬と猿とキジを吉備団子で買収し、鬼たちの固有領土たる鬼ヶ島を侵略し、金銀財宝を略奪する。ゆ、許せん!)

しかし岡山県庁の職員ほか何人かに会ううち、彼らに共通する大らかさが気に入った。「そうじゃろう」「東京の人も知っておろう」などと、言葉遣いは池田の殿様みたいだが「東の長野、西の岡山」と言われる「教育県」の片鱗をうかがわせる。

岡山は気候温暖で自然災害は少なく、水や米や果物に恵まれている。「寒さの夏にオロオロ歩く」ような、わが東北の貧しさとは対照的なのだ。面白くないが、反発は感じなかった。以来、倉敷・津山・笠岡・牛窓・新見・蒜山・高梁など、県内各地約20か所を訪ね回り、東京でも岡山出身の30人ほどに取材することになった。

元はと言えば百閒先生のお陰じゃろう。(桃太郎は今でも嫌いじゃがのう)