治五郎親方の大相撲春場所総評

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 「荒れる春場所」には程遠い、つまらない15日間だった。本命も大穴も不在の競馬レースみたいなもんだ。

休んでばかりの横綱二人がまた休み、ワシが近い将来の「咲勝(しょうしょう)時代」到来を早々と予見した阿武咲は全休、貴景勝も途中休場。終盤の優勝争いはモンゴル、ブラジル、ジョージア勢に絞られ、「日本人はいないの?」感が強かった。

優勝した鶴竜は、なんとか〝一人横綱〟の面目を保ったものの、相撲内容は全く褒められない。彼に限らず、今場所は「はたき込み」「突き落とし」「とったり」など苦し紛れの決まり手が目立ち、興趣をそいだ。

治五郎が憂さ晴らしによく見たのは、AbemaTVのインターネット放送。毎朝、序の口からの全取組を生中継するのは画期的だ。受信料という名の税金を取り立てて左うちわ状態のNHKも、今後は安閑としていられなくなるだろう。

序の口デビューした納谷(大鵬の孫にして貴闘力の息子=7戦全勝で優勝)と、朝青龍の甥の豊昇龍(6勝1敗)の素質は、ずば抜けている。この二人は楽しみだ。

AbemaTVは相撲の初心者をもバカにしない姿勢なので、行司や呼出の個性、懸賞金の仕組みや力士の日常などもよく分かるように出来ている。

「むふふ、越後屋、おぬしもワルよのう」の悪代官に見える三役格行司・木村玉治郎=写真左=は、外見と違って「いい人」らしい。立ち合いの瞬間が近づくと、左腕が(自分の意志ではなく見えない糸で引き上げられるように)ゆ~っくりと持ち上がる。

幕内格行司の木村晃之助=写真右=は、立ち合う力士にしっかり手をつかせることに極めて厳しい。「手をついて」「手を、ついて!」「手・を・つ・い・て‼」てな調子だから、気の弱い力士は委縮するのではないかと心配になる。

相撲界というのは一般社会に比べ、あまりにも時代遅れで特異な環境に置かれている。だからいろいろな事件も頻発するわけだが、よくよく観察すると、汲めども尽きぬ感興をそそるのである。