「ある意味」の本当の意味

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例えば「この官僚は、ある意味では政治の犠牲になった」という言い方がある。しかし治五郎がここで取り上げようとしているのは、森友問題や証人喚問の話ではない。従って佐川宣寿氏=写真=は一応、無関係。単にコトバの問題なのである。

「ある意味では・・・」という言い回しが耳に付くようになったのは、ワシの記憶が正しければ昭和50年代の前半、すなわち1970年代後半のことである。治五郎の記憶が正しかったためしがあるか? と言われそうなので、傍証を挙げよう。

その当時、Y新聞社のM支局では毎晩、ほろ酔い機嫌で外出から戻った元名物記者のS支局長が、居合わせた若い記者を応接セットに集め、酒の続きをやりながら「ブンヤ魂」について説教をするのが習わしだった。迷惑といえば迷惑なんだが、彼の体験談が面白いし筋は通っているから、ワシなどには結構、楽しめた。

ある晩、何の話題だったか忘れたが、2年先輩が自分の考えを聞かれて答える中で「ある意味では・・・」を2度、口にした。ワシにとっては耳障りだ。3度目の「ある意味では」に、S親分がキレた。「ある意味って、どの意味だ。ハッキリ言え!」

「ある意味」の「ある」は、「有る」や「在る」ではなく「或」であろう。

【或】特定▵できない(するに及ばない)物事を指して言う語。「-時-ところに/-程度の自由/-条件のもとで/-人・-日」

「アンタを含む一般大衆より少しレベルの高い話を、ワタシは今からするんだよ」というニュアンス。要するに「ある意味では」は、「もったいをつける」「もったいぶる」ための〝前置詞〟なのである。

【勿体】〔「勿」は無い意、「体」は正体の意〕実質はさほどでないのに、ちょっと見には内容のあるものを秘めているかのように見せかけること。「-をつける〔=何か重要な▵事柄(価値)が有るらしいふりをして見せる〕」

【ー振る】(必要以上に)重おもしそうにする。

ここに於いて「ある意味では」の哀れむべき本性が、白日の下にさらされたと言っていいのではないだろうか。

しかし「ある意味では」は、いつの間にか市民権を得て「ある意味」に短縮され、今ではインタビューに応じるスポーツ選手も〝街の人〟も普通に口にする。(「ある意味、嬉しいかも」って、ナンダソレハ)

「ある意味って、どの意味だ!」と、ワシは掴みかかりたくなるのですよ。(この感覚は、ある意味ヤバイのか)