〝同い年〟の映画「地獄門」を見る

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「治五郎さんも、少しはアンチエージングということを考えてみたら? 白髪を染めるとかシワを延ばすとかシミを取るとか」

「め、滅相もない。そんなことだけはしたくない。断固、拒否するよ」

【アンチエージング】〔anti-aging〕加齢による老化防止。多くの場合、若返りを目的にした医療・美容・整形などに対して言われる。

 1953年公開の日本映画に「地獄門」=写真=がある(監督・衣笠貞之助、出演・長谷川一夫京マチ子ほか)。総天然色(カラー)作品の草分けで、カンヌ映画祭のグランプリに輝いた名作である。

平治の乱の時代、遠藤盛遠という平家方の武士(のちの文覚上人)が、人妻である袈裟(けさ)に懸想し猛アタックする(ほとんどストーカー)のだが、最後は夫と間違えて彼女を殺してしまい、頭を丸めて仏門に入るという有名なストーリーだ。

65年前の映画だからフイルムの劣化が激しく、6~7年前にNHKの技術でデジタル復元され放映された。いま無料動画GYAO! で見られるのを知って、見た。文覚という怪僧は「平家物語」でも特異な位置を占める人物だから、ワシなどには興味津々だ。

それにしても、戦後わずか8年にしてこんな映像美を生み出した日本映画の底力を感じさせる。それを出来立てホヤホヤのようによみがえらせた〝アンチエージング〟の技術にも脱帽するしかない。

だが、しかし。自然体を全うしたいワシは「アンチエージング」は嫌だよ。「エージング」がいい。

エージング】〔aging=年をとること〕㊀加齢。老化。㊁酒やチーズなどの熟成。ねかし。