監視社会の功罪

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新潟市で起きた忌まわしい女児殺害・死体遺棄事件は、1週間で容疑者が逮捕された。

テレビ各局の情報番組では連日、目つきの良くない元刑事のコメンテーターが入れ替わり立ち代わり、水を得た魚のように推理を披露していたが、「犯人は近所にいる」説は正解だったし、さすがに的外れな仮説を立てる〝迷探偵〟はいなかったようだ。

昔と違って今は、防犯カメラや自動車のドライブレコーダー=写真=が町中に氾濫していて、今回もそれが決め手になった。もっとも、ホシ(犯人)は前月だかにも少女を連れ回して書類送検されたというマエ(前歴)の持ち主だから、捜査本部は当初から目星をつけていた節がある。慎重で着実な初動捜査だったと言えそうだ。

それにしても、小林容疑者(23)という青年は分別がなさすぎる。死体を電車に轢かせて本当の死因がバレないと思うところなど、子供じみている。今どき「死後轢断」かどうかなんて、司法解剖するまでもなく分かるのに。

思うに、彼の世代はスマホのゲームばかりやっていて、ミステリー小説などは読まないのだろう。犯罪捜査のイロハというものが全く分かっていない(そういうことをあまり熱心に勉強してほしくはないが)。

一つの警察署が、管轄区域に何人の不審者が住んでいるか、果たして把握しているものだろうか。それは公表されないから知りようがないけれども、どの署のデータベースにも「管内に居住する前科・前歴者の分布図」ぐらいは完備されているに違いない。頼もしいようでもあるし、恐ろしいようでもある。

何か大事件が起きて表通りで車の検問が行なわれ、捜査本部が運転者からドライブレコーダーの映像を集めたとしよう。

捜査本部長(署長)「この何回も出てくる年寄りは何者だ?」

刑事A「治五郎という名の隠居老人です」

刑事B「よく徘徊しているので、近所では顔を知られています。またチューハイを買いに行く途中かと思われます」

本部長「どうも私の勘に引っかかるんだ。一応、引っ張ってきて叩いてみるか」

な~んてことになったら、どうしよう。