キミは「若秩父の悲惨な戦い」を知っているか?
世にあまたいる若い「スー女」たちも、そこまでは知るまい。
治五郎が小学校高学年の頃だから、横綱・大鵬(1940~2013)の全盛期だったと思われる。「若秩父」=写真左=という相撲取りがいた。美男子とは言えないだろうが、豪快な塩撒きと真面目な取り口で存在感と人気があり、関脇まで行った力士だ。
彼が引退したのはワシが高校に入った1960年代の終わりで、当時はフォークソングの全盛期。大学に入って間もなく、なぎらけんいちという変わった名前のシンガーソングライターが「悲惨な戦い」という歌を発表した。なぎら健壱(66)は今も現役だ。
タイトルからして反戦歌かと思ったらそうではなく、シングルレコードのジャケット=写真右=を見れば分かる通りのコミックソングだ。調べたら1973年リリースとある。
土俵上で熱戦のあまり、若秩父の回し=フンドシが外れてしまい、国技館やNHKの不手際が重なって日本中が「それ」を見てしまうという悲惨なストーリーが展開する。
若い頃は、ばかばかしいものほど面白い。若秩父という個人名を出したせいかどうか物議をかもして放送禁止になったとか、いや実はそうじゃないのだとか、いろいろ話題を提供しながら今日に至っている。
人間の記憶が恐ろしいのは、ワシが若秩父事件を「史実」と半ば思い込んでいたこと。土俵上で立ちすくむ若秩父の困惑顔をクッキリと思い出すような気がするのだが、実はこの事件、全くのフィクションらしい。なぎらさん、(古い話だが)罪だぜ。
どうしても聴いてみたいという人は、YouTubeでどうぞ。(あまり勧めないが)