重箱読みと湯桶読みに抵抗を感じる理由(詳説)

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何もねえ、少し酔ったぐらいで、こんな話題を書くのに夜更かしする必要はないのに、まあ性分だから仕方あんめえ。

次のA~Eのうち、重箱読みはどれで湯桶読みはどれか。(送り仮名は略)

A.骨付(肉)=写真=  B.肉付  C.骨壺  D.売春  E.買春

正解は、B(にくづき)とC(こつつぼ)が重箱読み、E(かいしゅん)が湯桶読みである。(えっ、そうなの? と感じる向きが多いかもしれない)

小学校から中学校にかけて、訓読みと音読みの違いを分かりやすく教えてくれた先生がいる。「声に出して読んで意味が分かれば訓読み、分からなければ音読みなんだ」

だいたい当てはまるので納得していたのだが、世の中は簡単に割り切れないものだということに、やがて少年は気づく。例えば、肉(にく)も菊(きく)も音読みなのだ。

A(ほねつき)は訓+訓、D(ばいしゅん)は音+音で、全く何の問題もない。(社会的、道徳的に問題がないと言っているのではないよ)。

道徳問題は別にして、ワシが日本語として許せないのが「E」である。

「かいしゅん」といったら本来、別々な二種類の意味しかない。

【回春】〔再び春になる意〕病気が治り、心身共に元気になること。〔狭義では、老人が肉体的に若返ることを指す〕「―の喜び」

【改悛】〔「悛」は、あやまちを改める意〕 自分の犯した▵罪(非行)を悪かったと悟って、まじめになること。「―の情が著しい」

 そうだよ。「かいしゅん」とは、この二つのどちらかなんだ。買春を「ばいしゅん」と読むなら、それは全く問題ない。(道徳の話じゃないんだってば!)

しかし、それでは売春と買春を(発音上)区別できないもんだから「かいしゅん」という奇怪な言葉が作られた。あの新解さんまでもが、見出し語に掲げている。

かいしゅん【買春】⇒ばいしゅん(買春)

さすがに、その場では説明しないところに新解さんの困惑と良心が滲み出ている。では「ばいしゅん」を引いてみるとしようか。

ばいしゅん ㊀【売春】女性が金銭のために不特定の男性と性交渉を持つこと。「―婦」 ㊁【買春】男性が売春婦などと性交渉を持つこと。かいしゅん。

「かいしゅん」を日本語としては認めたくない新解さんの、苦渋の判断と言えまいか。

ところで、たまには骨付き肉を食いたくなった。(道徳上も問題あるまい)