「数十年に一度」という表現に問題はないか

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「変だなあ。日付が変わっても、外は静かなもんじゃないか」

 台風13号が接近して「ただでは済まない」と気象庁が言うもんだから、夫婦二人(夫の方は今春から一人前の高齢者)、部屋の隅で不安な一夜を過ごしている。

「いざとなったら、避難先は尾久八幡中学校だぞ。なに、区が避難所なんか準備している様子はない? 荒川や隅田川が決壊してからじゃ手遅れなんだ。ここはマンションの一階だから、ひとたまりもなく水没する。二階のH川さん宅も安全とは言えない。四階のN木さんや五階のS藤君とも仲良くしておくべきだった」

って、治五郎はそこまで心配性ではない(むしろ逆)。

タイトルに掲げた通り、最近の気象情報で目立つのは「数十年に一度の集中豪雨」とか「誰も経験したことがないような強風」といった、大概の日本人がビビるような警告の多さだ。

「数十年に一度」や「誰も経験したことのない」ような災害は現に起きているので、災害情報を侮ってはいけないとワシは思うが、それにしても「数十年に一度」が最近は多い。数十年どころか毎年、何件か起きているのではないか。

1959年の伊勢湾台風=写真左=では、愛知県や三重県で5000人を超す死者・不明者が出た。あれに匹敵する被害なら「何十年に一度」だが、それが先月も先々月も起きているような印象を受ける。「何十年」の希少度が落ちたと言おうか。

しかし、今夜のように「なーんだ、大山鳴動して鼠一匹」のケースに国民が慣れると、ヤバイことになる。気象庁が「来ない、来ない」と言っていた災害が来ると、彼らは失職・降格の憂き目に遭うから、来なくても「来る、来る」と警鐘を鳴らすしかない。

来なかったら、避難に備えて痛む腰に耐え、荷物をまとめた高齢者は「なーんだ」ではなく「来なくて良かった~」と感謝すべきものであるらしい。

しかし、これが繰り返されると、気象庁は「オオカミ少年」の汚名を着せられることになるのではないか。ワシが心配しているのは、そこんところなのだ。

【狼少年】㊀人間社会から隔絶し狼の乳で育てられ、人語を解さなくなった少年。㊁〔イソップの寓話で〕狼が出たと騒いで人をだまし愉快がったために、最後はおとなたちの不信を買った少年。

1960年代の初期TVアニメに「狼少年ケン」=写真右=というのがあった。ケンは㊀なのか㊁なのかって? うーん、どっちとも違うんだが・・・

今を時めく気象予報士の中に、あれを見たことがある人は何人いるだろうか。