二つのもののうち、一つを必ず忘れる

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「治五郎日記は毎回、愚にもつかないことばかり書いている」と感じる読者が多いのではないかと思う。書いている本人も実は同感だ。しかし・・・。

加齢とともに人間の体(特に首から上)が日々、どのように衰えていくかということに関して、このブログは赤裸々な告白に満ちている。貴重な臨床例が発見される可能性があるから、高齢者の医療に携わるような立場にある人は、心して読むべきだと思う。

さて写真は、今は亡き太神楽の海老一染之助・染太郎である(左が兄の染太郎、右が弟の染之助)。曲芸をやるのはもっぱら染之助の方で、染太郎はしゃべるだけだから、同じギャラをもらうのは不平等のような印象を素人は受ける。本当は、そういうものではなかったことを、我々は染太郎の死後にしみじみと思い知らされるのであるが、今はそういうことが言いたいのではない。

染之助染太郎のように最初からワンセットでやってきた二人の場合、どちらかを思い出せないということはない。曾根崎心中の「お初徳兵衛」や漫才の「やすしきよし」も同様だ。たとえが古いと言うなら、タカアンドトシを加えてもいい。

困るのは、属性や特徴を異にする二つのモノ(またはヒト)を同時にインプットされる場合だ。ワシの得意ジャンルに属する大相撲の取組を例に挙げよう。

幕下の下位で二人が呼び出されて土俵に上がる。「西、納谷(なや)。東、豊翔龍(ほうしょうりゅう)」とアナウンサーが言い、画面に四股名が出る。納谷といえば大鵬の孫にして貴闘力の息子、豊翔龍といえば朝青龍の甥。同期の大物同士だ。

これは見逃せない、と勝手に張り切るのだけれども、5~10秒後には一方の名前を思い出せなくなっている。納谷と豊翔龍に限らず、誰と誰の対戦であっても例外なく一方を忘れる。思い出した時はもう制限時間いっぱいだったり、勝負がついたりしている。

白鵬稀勢の里横綱対決でさえ、そうだという現実に直面してワシは愕然とした。

二つのもののうち、一つを必ず忘れる。ワシの場合は数年前から見られる現象のようですが、これは一体どういう脳の仕組みによるものなのでしょうか、先生。