山松ゆうきちの不思議な世界

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てっきり「過去の人」だと思っていたので、漫画家の山松ゆうきち (1948~)が今も現役らしいと知ったのは意外だった。

といっても、治五郎は単行本になった彼の諸作品=上=を読んだことがない。そもそも少年時代を除き、漫画に熱中した経験がない。青年時代に、定食屋などに置いてあるコミック雑誌で見た覚えがある程度だ。

びろう【尾籠】〔失礼の意の雅語「をこ」の借字の音読〕話題が大小便などに関係が有って、口にすることが遠慮される様子だ。「食事時にーな話で恐縮だが」

4コマだったか8コマだったか、山松漫画でワシが思い出すのは、次のようなものである(尾籠な話で恐縮だが)。

①山道を、和服の美人がシャナリシャナリと歩いてくる。心の中で、こう考えている。

(世の中で最も汚いもの、それはウンコだと私は思いますの)

②その彼女が突然、便意を催した。矢も楯もたまらず、木立の中に入って用を足す。スッキリしたが、気がつくと紙がない。

③足元に蕗(フキ)が生えていたので、大きな丸い葉を1枚ちぎって尻を拭いた(助かりましたわ)。ところが、葉が破れてしまった(汚いっ)。手を強く振り払う。

④勢い余って指が木に当たった(痛っ)。思わず、その指を口へ。(あ~っ‼)

ここで幕。なんという、救いのない漫画だろう。しかし誰にでも、こんな経験の1度や2度はあるものだ(ないか)。

ここに描かれているのは「ダメな人」ではなく「人間のダメさ」だと思う。前者への嘲笑ではなく、後者への共感である。作者のタメ息が聞こえて、ワシゃ好きだ。