知らなかったよ。ホントかなあ
日本文学史上、おそらく最も有名な写真2葉である。太宰治=左=と坂口安吾=右=。(©林忠彦作品研究室)
太宰の方は普通、縦長にトリミングされているから談笑している相手の背中は写っていない。この背中は誰なのか? 出版社の担当編集者だろうと思ったら、これがなんと坂口安吾だというから驚くではないか。(背広らしいものを着ているし、体形も少し違うような気がして、素直には信じられない)
今年は、昭和の文士を撮りまくった林忠彦の生誕100周年だと言うので、さまざまな企画が催された(今ごろ気づいている)。新潮社のPR雑誌「波」9月号に息子さんが寄稿した文章によると、背中の人物が坂口安吾であることは間違いないらしい。
この写真は、銀座のバー「ルパン」で織田作之助の写真を撮っていた林に、居合わせた男(太宰)が「俺の写真も撮ってくれ」とせがんだと言う。店が狭いので、林はトイレ(1945~46年だから、銀座といえども水洗式ではなかったろう)の便器にまたがってロー・アングルで撮った、という話だけは昔から有名だ。
新潮社では100周年「作品BOX」を発売中。「無頼」をテーマに作家8人の写真8枚を超高精彩版画で再現し、特製のトタン製ボックスに収めた。限定120セットで、本体価格12万円! よし、すぐ注文するとしよう。(ウソです)
ちなみに、8人の無頼とは太宰、坂口、三島由紀夫、瀬戸内晴美、檀一雄、織田作之助、高見順、田中英光。あの寂聴さんも昔の名前で出ています。そんな時代なのだ。