モンゴル人力士と代理人弁護士

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角界を揺るがした〝鳥取の夜〟事件が1年を過ぎて、また新しい展開を見せている。2400万円余を支払えという民事訴訟を、提訴した被害者である貴ノ岩(側)が急に取り下げたのだ。「治療費を含め、全額を自分が負担してもいい」とさえ言う。テレビでは「相撲の専門家」たちが、いろんな意見を述べている。

かつて小結まで行った祖国の〝名士〟バトバヤル(旭鷲山)の発言を除けば、どのコメンテーターの意見にも頓珍漢なところがある。「どこか上の方から圧力がかかっているに違いない」などと、いかにも現代日本人の発想しがちなことだ。

そういう話ではないんだよ。

貴ノ岩(本名バーサンドルジ)が訴訟を起こしたのは、本心からではない。が、取り下げたのは本心からである。これをよく理解しているのは、一方の当事者である元横綱日馬富士なのではないかと思う。

バーサンドルジという少年は8歳だかで母親と死別し、父親にも死なれた後は長兄に養われた。「実兄だけが頼りだった」という境遇を、今の日本人は誰も知らない。

さてバーサン問題を、どう考えるか。ワシは決して暴力を肯定する者ではないが、ことの次第は以下のようなものだったと推測する。

日馬富士「昨夜はチト怒りすぎたようだ。悪かったな」

貴ノ岩「何でもないっす。殴られたお陰で、俺も少し反省しました」

モンゴル人同士であれば、これで済んだのだ。酔って喧嘩になるのは当たり前のことであって、同席した白鵬以下が黙っていたのも当然だ。ところが、一部スポーツ紙が報じたもんだから日本では「大事件」になり、話がこじれ続けてきた。

「日本国は法律に支配されているんだから、以後は弁護士さんに任せなさい。マスコミに直接、対応することはまかりならん」。何かの圧力が働いたとすれば、この時点だ。

両力士が本当はどう感じているのか? 「大げさなことになっちゃったなあ」だろう。

彼らは「何も言えません。代理人弁護士から聞いて下さい」と言うしかなくなった。

【代理】その人に代わって事件・事務などを処理すること。また、その人。

 あの事件に関して、当事者が人前で何かを語るということは一切、なくなった。出てくるのは代理人弁護士だけであり、彼らは「モンゴル」を知らなすぎる。

 貴ノ岩の兄や弟たちが現在、モンゴルで遭っているというバッシングの実態は日本人には分かるまい。話がややこしくなるだけなので、代理人弁護士はなるべく出てこないで下さい。(もう手遅れだが)