また万博? もう、いいんじゃないの?

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<日本が大阪誘致を目指す2025年国際博覧会(万博)の開催地を決める博覧会国際事務局(BIE)総会が23日、フランス・パリで行われ、加盟国による投票の結果、日本が開催権を獲得した。大阪での大規模万博開催は1970年以来、55年ぶり2回目。国内での開催は2005年愛知万博以来、20年ぶりとなる。>(読売新聞)

70年万博と言えば、青森県の(たしか)高校2年生だった治五郎は大阪での馬鹿騒ぎには無縁だったが、あの喧騒ぶりはよく記憶している。以来、大きなイベントに人が群がる光景を(嫌だなあ)と感じる気質が、増幅されて今日に至っている。

当時の日本社会を鋭くとらえた映画に、山田洋次監督の「家族」(1970年)=写真=がある。長崎県の島で生活に窮した夫婦(井川比佐志と倍賞千恵子)が北海道の開拓民を志し、幼い二子と老父(笠智衆)を伴って列島北上の汽車旅に出る。(どうして飛行機に乗らないの? と驚く人は、松本清張「点と線」でも読んでて下さい)

よせばいいのに、彼らは大阪で万博を見物する。赤ん坊が体調を壊し、東京まで来て死ぬ。一家はなんとか北海道・標津までたどり着くのだが、笠じいさん(元炭鉱夫)は、上機嫌で炭坑節を歌ったと思ったら翌朝には体が冷たくなっていた。

とんでもなく救いのない物語なのだが、初めて育てた牛が無事に出産したことと妻(倍賞)の妊娠が判明したことが、最後の救いになっている。「命」の重みというやつだ。

2025大阪万博が(大騒ぎの末に)成功を収めたとしよう。今から7年後だ。まだ山田監督が存命で現役だったら(ギネスに載りそう)、どういう映画を撮るだろうか。

<2025年大阪万博は5月3日~11月3日の185日間、大阪湾の人工島・夢洲で開催する計画だ。150か国・地域を含む166機関の参加を想定。来場者約2800万人、経済波及効果は約2兆円を見込む。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。「健康・長寿」の実現に資する万博を目指す。>(読売新聞)

やはり、そう来るか。前回すでに「人類の進歩と調和」を掲げた万博が、それが実現されたかどうかの検証をしないまま、次のテーマを選ぶとなれば「健康・長寿」しかないわけだ。でも、それでいいのだろうか。

1970年当時の公害や「交通地獄」「受験地獄」は少し緩和されたかもしれないが、それに代わる少子高齢化と過疎、格差の波が招いたものは「長寿地獄」だろう。

万博なんちゅうものは、「経済成長=幸福」と信じられる国(地域)が、そう信じられる時期に開催すべきものだ。日本は、先進国としては老境に差し掛かっている。次の開催地はアゼルバイジャンに譲ればいいじゃん、と治五郎には思えてならなんだ。