むかし愛読したはずの作品を読み直すと・・・

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・・・改めて感心させられる反面、ガッカリすることもある。

毎年、今の季節のテレビは(NHKを含め)各局、BKタレントが総出でBK番組に出ているので、どれも見る気にならない。YB(やぼ=野暮)を承知の上で、BKを漢字で表記するならBは馬、Kは鹿となる。

幸い、現状に不満な視聴者は何十年も前に高い評価を得た映画やドラマが見られる時代になった。ただし、毎日というわけにはいかない。テレビを離れて読書に励むという習慣が、最近は十数年ぶりに戻りつつある。

松本清張の中・短編を収めた分厚い一冊を読みだしたら、やはり面白いので熱中した。

天城越え」などは、石川さゆりの歌に影響されたのか「これだけの話なんだっけ?」と意外な気がする。大人の恋の物語では全然ないのだった。(同名の映画に出演した田中裕子の名演が印象深かった影響もありそう)

百円硬貨」という短編では妻子持ちの男に入れ揚げた女が、勤め先の金融機関から何千万円も横領し、現金で膨らんだカバンを持って遠方にいる男のもとに向かう。途中、彼に電話をする必要が生じるのだが、小銭の持ち合わせがない。

ケータイどころか、テレカ(テレホンカード。ああ、懐かしい)も無い時代だ。明け方のことなので、連絡手段は「赤電話」(ああ、懐かしい)しかないのだが、遠距離電話に必要な「百円玉」が1個もない。カバンには万札が詰まっているのに・・・。

推理作家が「百円硬貨」と題して書き始めたら、大体こういうストーリーになるのではないか、という予測は成り立つ。(しかし、やはり清張はうまい)

ところで、治五郎は手元に「新明解国語辞典」を常備しているので、読書中に寄り道することが多い。「入れ揚げる」と書いたが「入れ込む」じゃダメなのか?

【入れ揚げる】愛人や好きな遊びなどに夢中になって、自分の持っているお金などをその事ばかりに使う。

【入れ込む】〔「入れ上げる」+「つぎこむ」の混交か〕何か一つの事に夢中になってのめり込む。「大変な入れ込みよう」

新解さん。「混交」説には啓蒙されましたが、「いれあげる」の表記が「入れ揚げる」と「入れ上げる」に分裂しています。次の第八版では、どちらかに統一して下さい。

(歳末に増える高齢読書家というものは、なかなかウルサイ存在なのであった)