もしも高倉健がプレゼンをやったら
ダメでしょう、それは。
「不器用な男じゃけん、うまく言えんとですが・・・」そこで急に笑顔に転じ、身振り手振りを交えながら、立て板に水のような英語で「今回、わが社が開発した商品は世界のどこに出しても恥ずかしくない傑作でございまして」
やはり、ダメでしょう。いや、稀代の俳優であるからには、そのくらい演じるかもしれんが、やはりダメじゃないでしょうか。新商品が売れるとは思えんとですよ。
日本の男は、何よりも「巧言令色」を恥ずべきこととしてきた。
【巧言令色】相手に気に入られようと、口先だけうまいことを言ったり にこにこして見せたり すること。
今や、そんな風潮は全く廃れた。国際社会で生き延びるには、謙遜ではなく自己PR、無口ではなく雄弁・おしゃべりでなければならない。健さん受難の時代と言える。
スポーツ界でも、ぶっきらぼうで無愛想な選手はマスコミに好かれない。つい最近、引退を表明したサッカーの小笠原満男(39)(大船渡市出身、鹿島アントラーズ)について、スポーツ報知で長年担当した記者が、こう回想している。
「まともな取材が出来るようになるまで1年半、無駄話につきあってくれるようになるまで6年、愚痴を聞かせてもらえるまでは14年かかった」
治五郎はこういう男が好きなのだが、今の日本では皆が「プレゼンテーションの上手な人」を目指しているように思われてならない。次代の高倉健は現われるだろうか?