浅野内匠頭は心神耗弱状態だったのか?

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滋賀県彦根市の交番=写真①=で昨年4月、上司の巡査部長(当時41歳)を射殺したとして殺人罪と銃刀法違反(発射、加重所持)に問われた元巡査(20)(当時19歳、懲戒免職)の裁判員裁判が終盤に差し掛かっている。

検察側と弁護側の主張を総合すると、大体こんな事件像が浮かんでくる。教育熱心だがネチネチと部下をいたぶる上司に対して、我慢し続けた若者が、親の教育責任にまで言及されたことの屈辱に耐えきれなくなってキレた。(上司像には異論もある)

かつて事件記者を経験したこともある治五郎は(報道の当事者ではなくなったので)、いろんな連想をするようになってきた。

撃たれた上司を吉良上野介、撃った巡査を浅野内匠頭に置き換えると、事件の全体図は非常に分かりやすくなる。日本人が何百年来、愛してやまない「忠臣蔵」の発端とされる「松の廊下」事件=写真②=。(分かりやすくはなるが、思い込みは禁物)

今回の交番事件では、弁護側が被告の「心神耗弱状態」を主張しているという。浅野内匠頭はどうだったのだろう。(統合失調症だった、などの説も最近はある)

吉良巡査部長にとって不運だったのは、浅野巡査の使った凶器が脇差ではなく拳銃だったことと「浅野殿、ここは殿中(いや交番内)でござるぞ!」と羽交い絞めにして止める同僚が現場にいなかったことだ。(この同僚は吉良巡査部長を「そう恨まれるような人ではなかった」と証言しているらしく、だから人間関係は難しい)

どっちみち現代であれば、浅野さんは「即日切腹」ではなく「殺人未遂で懲役三年。ただし情状を酌量して執行猶予四年」ぐらいになったろう。しかし、それだと「忠臣蔵」という膨大な物語世界は生まれようがない。

(ワシなんかが今ごろ言ったって、しようもない話なんですけどね)