外国人の日本語能力向上に関する一観察

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外国人のための「TRY! 日本語能力試験N1」という受験参考書=写真左=を今、来日中の義妹バルジンに借りて読んでいる。N1というのは上級者向けということで、サブタイトルは「文法から伸ばす日本語」。

上級者向けだけあって、なかなか手ごわい。モンゴル人用のはまだ需要が少ないので、中国語圏の学習者用のを代用しているが、バルジンは、おっとりしているようで相当に日本語が分かるのだ。姉(ワシの妻)との会話に母国語を必要としない。(だからワシのモンゴル語は上達しない)

この本の、たとえば「~にかこつけて」という項目。使い方の説明として<「AにかこつけてB」は「AをBするための口実にする」と言いたいときに使われる。他の人を批判するときに使われることが多い>とあって、実例が4つほど載っている。

①彼は、地方出張にかこつけて、どうやら恋人に会いに行っているらしい。(②③略)

④要するに、雪とか桜とか季節の何かにかこつけて、集まって騒ぎたいんだろう。

これで使い方を理解してもらったという前提で、すぐ応用問題に入る。以下の〇〇部にピッタリの言葉を「病気・子ども・取材・節電」の中から選べというのだ。

1)記者をしていたときは、〇〇にかこつけて、各地の温泉を楽しんだものですよ。

2)ゲームショーでは、〇〇にかこつけて、自分が楽しんでいる親たちの姿も結構見かけますよ。

3)〇〇にかこつけて、社長にオフィスのエアコンを全部消され、寒くてたまらない。

4)A:社長は不祥事を起こして以来、〇〇にかこつけてマスコミから逃げているらしいよ。

  B:それが本当なら無責任だよね。

もちろん正解は、1)取材 2)子ども 3)節電 4)病気。 日本の大人で間違う人は少ないだろうが、日本語を勉強中の外国人にとっては案外、難しいのではないか? 思うに、この受験参考書には「日本語学習にかこつけた社会批評」の側面もある。日本で暮らしていくための「常識」や「傾向と対策」を含んでいるのだ。(親切!)

それにしても、1)「記者をしていたときは、取材にかこつけて、各地の温泉を楽しんだものですよ」って、誰のことだ? 聞き捨てならぬではないか。温泉にはあまり執着のなかった治五郎記者(元)としては、身に覚えのない冤罪だ。写真右(青森県不老不死温泉らしい)に写っている足なんか、どなたのものか全く存じ上げない。

念のため、「かこつける」について親愛なる新解さんに相談してみた。

かこつける【託ける】おおっぴらに何かをするために、関係の無い他の事を表面の理由にする。「仕事にかこつけて家庭を顧みない / 就職活動にかこつけて授業をサボる大学生」

うんうん、それなら身に覚えは幾らでもあるんだ。志のある優秀な留学生諸君は、新解さんを隅から隅まで繰り返し読むべし。