台風19号を記念して「岸辺のアルバム」鑑賞

f:id:yanakaan:20191020225638j:plain

 脚本家・山田太一の代表作で、テレビドラマの歴史に残る名作といわれる「岸辺のアルバム」(TBS、1977年)を2日間で一気に全部見た。1話50分×15話だから結構、根気が要るのだが退屈はしなかった。

いま風に言えば、テーマは「家族の崩壊と再生」てなことになるんだろうか。一流商社の部長で、会社の利益のために仕事一辺倒の夫(杉浦直樹)、貞淑な主婦なのだがひょんなことから一時、見ず知らずだった男(竹脇無我)と不倫(当時は浮気といった)に走る妻(八千草薫)。大学生の娘(中田喜子)や受験生の息子(国広富之)も、それぞれに難しい問題を抱え始めている。

放送当時(今も)、治五郎は中田や国広と同世代なので「あ~、ワシにもこんな時代に『若い頃』を生きてきた経験があったのかな」という感慨は覚えるが、価値観のズレからか、どの登場人物にもあまり感情移入することはできなかった。社会全体に「ドラマのような世界」が珍しくはなくなった、という現実があるのかもしれない。

1974年だかの「多摩川水害」によって一家の住む家屋が濁流にのまれて流されるシーン(実写)が印象的で、これがジャニス慰安(いやジャニス・イアン)のテーマ曲「ウィル・ユー・ダンス」と共に毎回、繰り返される。15回も続くと、さすがに飽きた。

「初めて経験するような大雨」が、1年に何度も繰り返される時代になった。横溝正史風に分かりやすく言えば「地球温暖化のタタリじゃあ!」ということだろう。

いま現在も外は大雨だ。さっき届いた朝刊を開くと、1面に<台風19号の被災地では、少しの雨でも洪水の危険性が高まる恐れがあり、気象庁は警戒を呼びかけている>と載っている。

慣れっこになったけれども、楽観は禁物だ。なにせタタリじゃけんのう。