「ペロルの決算」考
人間は普通、年を取るにつれて体が乾燥してくる。もし「還暦を過ぎたら、なんだか体が脂ぎってきまして」という人がいたら、その人は少しヘンだと思う。
治五郎は(自慢じゃないが)一般人に比べて老化の進行が早めなので、体の乾燥度も人より早いようだ。50を過ぎる頃には、新聞をめくるのが難儀になってきた。
つい、指先をペロリと舐める癖がついて久しい(大体は親指か人差し指で、薬指や小指を使うことはない)。読み終わった新聞はヨレヨレになっている。
図書館などでも、指を舐めて新聞をめくる高齢者が少なくないらしく、顰蹙を買っている。この行為を「ペロリズム」と呼び、人前でも平気でやる人のことを「ペロリスト」と称する。(ということを最近、知った)
ペロらない、ペロります、ペロる、ペロる時、ペロれば、ペロれ、ペロろう。う~む、この新しい動詞「ぺろる」は五段活用に違いない(とワシは見た)。
ペロリをやらずに済めば済ませたいのだけれど毎朝、新聞を開くたびに指サック=写真左=を装着するというのも、いかがなものか。
それで思い出すのだが昔、若かりし沢木耕太郎が書いたノンフィクションの傑作「ペロルの決算」=写真右=がある。あれは確か・・・え、違う? 「ペロルの決算ではなくテロルの決算だろう」って?
言われてみれば、そうだったような気もする。読み返してみたいが、また文庫本をペロることになりそうだ。