略語の品格を問う

f:id:yanakaan:20171111235546j:plain

ああ、思い出しました。今から40年前、24歳の新聞記者だった治五郎は二輪車=写真=に乗って毎日、警察署から事件・事故の現場へ〝出動〟していたのです。(格好は、これほど派手ではなかったような気がする。普通のヘルメットは一応かぶっていたが)

50cc のバイクだと、講習を受ければ試験なしで免許が取れた。(あ、今もそうなんですか? 乗用車を運転するには教習所に通わなければならないが、事件や事故が起きると取材のためキャンセルせざるを得ず、普通免許を取るまで丸1年かかった)

講師が盛んに口にする「ゲンツキ」という言葉の意味がよく分からなかったが、それは「原動機付自転車」の略称「原付」だった。なんだか品のない略語だな、と感じたのを覚えている。警察官が多用する「職質」も、ヘンだ。「職業の質」って何だ? と思ったら、これは「職務質問」の略なんだという。「現逮」は「現行犯逮捕」。

日本語の特質として「なるべく省略する」がある。意味さえ通じれば、1字でも削りたい。これは今に始まったことではなく、昭和初期のモボ(モダンボーイ)・モガ(モダンガール)があるし、戦後はベア(ベースアップ)がある。

なんだそれは。ベアと言ったら熊だろう! と、いちいち腹を立てるから治五郎の血圧は上がりこそすれ下がらない。略語に起因する健康被害と言えまいか。(言えまい)

スマホ」も、海外では通用しない日本だけの略語と思われるが、ワシはスマホには寛大な方だ。「スホ」や「スーホ」に略されなかっただけ、幸いだと言える。ところで、内モンゴルの民話「スーホの白い馬」を再読してみたくなった。