「生れて墨ませんべい」の真実②

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 A「太宰治の『生れて、すみません』という有名な言葉があるね。『人間失格』だっけ、それとも『斜陽』だっけ」

B「ああ、それはどっちも違うよ。『二十世紀旗手』という短い作品の冒頭に置かれたエピグラムだな。確か昭和12年(1937年)に雑誌『改造』に載ったんだ」

世の中にBタイプの人は結構、いる。きのう調べて知ったことを、前から知っていることのように開陳せずにいられない。ところが実はAの方がクセモノなのだ。

A「それは本当に太宰の言葉なんだろうか」

B「・・・え?」

A「当時、寺内寿太郎という名を持つ〝無名〟の詩人がいて、『遺書』と題した一行詩を書いている。それが<生れてすみません>なんだよ。人づてに知った太宰が勝手に借用したんだが、寺内が〝盗用〟に激怒したと聞いた太宰が落ち込んだという証言も残っている」

B「恐れ入りました。この煎餅、ちょっと食ってみないか?」

A「ほう、『生れて墨ませんべい』=写真=? 俺もそこまでは知らなかった」

このような会話が毎日、どこで何百回繰り返されているかは知らない。それでいいのではないでしょうか。