「痴漢」にされていたかもしれない私

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<電車内で女性に痴漢をしたとして東京都迷惑防止条例違反に問われた埼玉県の20歳代の会社員男性に対し、東京地裁は12日、無罪(求刑・罰金30万円)とする判決を言い渡した。井下田(いげた)英樹裁判官は「満員電車の揺れや周りの乗客に押されて生じた接触を、意図的に触られたと女性が誤認した可能性がある」と述べた。(以下略)>(13日付読売新聞朝刊)

治五郎は満員電車というものに、もう何十年も乗ったことがない。従って、今はどういう状況になっているのかよく知らない。しかし、学生だった1970年代前半の満員電車は「殺人的」と呼べるほどのものだった。

東武東上線だったか地下鉄丸ノ内線だったか覚えていないが、雨の日の朝だったことは間違いない。乗る時に傘を落としたので、もみくちゃになりながら必死に傘を拾ったのだが、上下を逆に持った状態で奥に押し込まれた。

当時は流行していたミニスカートの女性に、自分の体を後ろから押し付けられた。身動きが全く取れない。「満員電車の揺れや周りの乗客に押されて生じた接触を、意図的に触られたと」誤認されて当然の不幸な事態である。

悪条件が重なる。「?」のマークを逆にしたような傘の取っ手=写真=が、相手の股間に食い込んでしまったのだ。何とかして外そうとするのだが、そうすればするほど外れない。むしろ、ますます食い込む。相手も、これが意図的な行為ではないことを理解できる状況なので、声を挙げたりはしない。

さらに悪条件が重なって、架線かポイントのトラブルで電車が5分以上も止まった。もう、ダメだこりゃ。

しかし、止まると多少は身動きできるようになるものらしく、傘の取っ手はようやく外れた(というか、抜けた)。あの時ほどホッとしたことはないなあ。

就職先を決めなければならない時期だった。ワシが新聞社を選んだのには幾つかの理由があるが、その一つは「勤務時間が不規則で夜勤や泊りが多いのは構わない。ただ、満員電車で通勤する会社員にだけは、なりたくない!」だった。

 井下田とかいう裁判官は、ワシとは違って司法の道に進んだエリートだが案外、雨の朝に満員電車で傘の取っ手による難儀を経験したことがあるのではないだろうか? 余計なお世話ではあろうが、そんなことまで想像してしまう治五郎なのであった。