残念でした、日本のパピヨン
1970年代前半のアメリカ映画に「パピヨン」がある。S・マックイーンとD・ホフマン=写真=が、命がけで「逃げる」男を演じたエンタテインメントの傑作だ。
なぜ治五郎が今ごろ「パピヨン」を思い出したかというと・・・。
<愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から平尾
平尾容疑者は、広島県尾道市の
尾道なら、ワシは仕事で二度ほど行ったことがある。作家・林芙美子と、小津安二郎監督の映画「東京物語」に敬意を表しての取材だったが、印象的なことが三つあった。①向島との間の海が狭く、川に見える ②空き家(廃屋)が多い ③野良猫が多い。
平尾という男は凶悪犯ではなく卓抜した技術を持つドロボーで、刑務所が「塀は要るまい」と認めた模範囚だった。ワシは(塀の中で暮らした経験こそないが)いろんな所から逃げてきた経歴の持ち主なので、ほんの少しだが(おい、平尾とやら、逃げ切れよ)と内心、声援を送りたい気持ちがあったことを告白するにヤブサカではない。
パピヨンは最後、海に飛び込んで自由を手に入れるのだが、平尾受刑者(今じゃ再び容疑者)の場合は悪運が尽きた。24日だかに「泳いで対岸に渡った」時、彼の心中に去来したものは何だったのだろうか。衣類(一部は盗品)は、忍者みたいに頭の上 に乗せて平泳ぎで渡ったのか。
治五郎には、汲めども尽きぬ興味が湧くのである。