巨匠・倉本聰のドラマに欠かせないもの二つ ②

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 (承前)昨日のことかと思ったら、もう3日が過ぎている。しかし、そんなことに今さら驚くような治五郎ではない。倉本ドラマの続きの話だ。

テレ朝が平日の12時半から放送している連ドラ「やすらぎの刻(とき) ~道」=写真=は、NHKの朝ドラばりに1回15分少々のドラマを1年間ぶっ通しで続ける企画。

84歳になった倉本が、脚本家人生の集大成というべき意気込みで全力を注いでいる様子が分かる。(と言っても、治五郎が毎日そんなに熱中して見ているわけではない)

舞台は、元大物芸能人ばかりが入居している高級老人ホーム。主人公の老脚本家は、もちろん作者自身がモデルだ。これに加えて、入居者仲間(橋爪功)に青春時代の原風景=写真=を語らせるという二重構造になっている。倉本作品らしい〝ピリ辛・ホロ苦の人間愛〟とでも呼ぶべき世界だ。(ストーリーは、例によって面倒だから省略)

主演の石坂浩二が気の毒なのは、極端な愛煙家という設定なので、四六時中(特にシナリオ執筆中のシーンは)のべつまくなしにタバコを喫う点だ。石坂という俳優自身は、タバコが苦手なのではないかと思う。(喫い方が下手というか不味そうだ)

モデルがモデルだけに、石坂浩二は観念するしかないだろう。なにしろ倉本聰といえば〝喫煙の権化〟であり、古い映画やドラマの喫煙シーンさえも禁止したがるような〝禁煙ファシズム〟とは体を張って闘ってきた人だ。

人に聞いた話だが、北海道・富良野にある自宅や仕事場を訪ねると「喫煙自由」の立て札があり、タバコの嫌いなマスコミ関係者などが取材に行くと「非喫煙室」に通されるんだそうだ。動物園の檻の内と外が逆転したような具合である。

中島みゆき(の歌)が好きでたまらないらしいのも、倉本の昔から変わらないところ。今回のドラマでは主題歌の2曲を彼女に委ねている。治五郎の場合、中島みゆきを昔ほどは聴かなくなった。

思うに、彼女の本領は「恋が成就しない者のウジウジ」である。「ダメだった者のツブヤキ」なのである。

うじうじ つまらぬことを気 にしたり ためらってばかりいたりして、思い切った行動ができないでいる様子。「いつまでもーするな / めそめそー泣き言ばかり言っている」

昔の倉本作品で、中島の「ホームにて」が流れた時は「なんちゅう場面で、なんちゅう曲を流すんだろう」と失禁しそうなほど感動したものだが・・・「麦の唄」とか「地上の星」とか、みゆき姐さんは時々〝演説調〟になって声を張り上げるので、こちらの気持ちが少し萎えてしまうという事情はある。

倉本聰は、いよいよ「最期」に向かって歩きだしているように見える。静かに見守りたいと思うが、寿命ばかりは思い通りになりませんからね。

「あ、115歳になった。あとは何を書こうか」。何もないんじゃないでしょうか。