「転ばぬ先の」と来れば「杖」と続くのが常識だろう。しかし!

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日本の高齢者にとっては、外を歩いていて転ぶ以前に転ぶ可能性の高い場所がある。

風呂場である。ツルッ、ガツン、ドサッ、ピーポーピーポーという事態。

日ごろ「一寸先は闇」と肝に銘じている治五郎に覚悟は出来ているつもりだけれども、人に迷惑をかけることになる。迷惑を受ける立場にある配偶者が、いつのまにかホームセンターで上の写真みたいな物を買ってきていた。

「何だこれは? マットの裏にタコの吸盤みたいなものが、いっぱい付いてるな。なんだか急に酢ダコでも食いたくなった」

聞けば「浴槽すべり止めマット」というものだと言う。 狭いユニットバスの湯舟の底に敷いて、出入りする際に手をつく部分にも小型のを置いてみた。

 なるほど、これだと滑りにくく、転ぶ危険性が激減するだろう。心強い。

ころぶ【転ぶ】㊀何かにつまずいたり 突かれたりして からだの安定を失い倒れる。「すべってー / 転ばぬ先の杖〔=何事でも用心するに越した事が無いというたとえ〕(以下略)」

さすがに新解さんは、「転ぶ」の用例として「すべって」を「杖」よりも優先させていた。形式・様式ではなく実用本位という辞書の姿勢が伺えて、これまた心強い。

しかし、滑って転ぶ危険が減ったワシは、そろそろ杖が必需品になるだろう。街で杖をついている先輩諸氏を見かけると、つい、その品定めをしてしまうのであった。