日本人の姓名は難しい(続き)
「コンバンワ。私ハ、日本人ノ姓名ニ関心ヲ抱キツツアル事ヲ自覚シテイマス」
「またヘルマンか。その関心については先刻承知だよ。今度は何だい」
「治五郎サン。私ハ驚イタノデス。本当ニびっくり仰天シタ次第ナノデスヨ。聴イテ下サイマスカ?」
「い、いいとも」(この青年の日本語は、かなり立派だ。ただ、何かがナニなのだ)
「私ニハ、心カラ愛スル日本人の女優ガイマス。コノ日本語ハ変デスカ?」
「いや、変じゃないが『愛する』よりは『大好きな』ぐらいの方が無難じゃないかな。『ぞっこん』とか『首ったけ』いう言葉もある。愛情が一方通行だというニュアンスも示唆できる。ところで、ヘルマンは誰を愛してるんだ?」
「オー、ソレヲ聞カレルト赤面シマス。愛ト言エルノカドウカ・・・一方的ナノデ『ぞっこん』ト言イ直シマショウ」(この青年は、やはり見どころがあると思う)
話を要約すると、彼は女優の黒木華=写真左=が気に入ったのだが「華」を「はる」と読むことを数日前まで知らなかった。かつてベルリンの日本語学校で、「華」は音読みで「カ」もしくは「ケ」、訓読みでは「はな」と読むことを教わった。
それを、なぜ「はる」と読むのか? 彼は何日間も悩みに悩んだのだろう。
「モット分カラナイコトモアリマス。日本デハ「まさる」トイウ名ヲ「虎上」ト表記スルコトモ可能ナノデスカ?」
なんのこっちゃ。(ははあ、元横綱・若乃花=写真右=のことか)
「ああ、それはね、相撲を引退してタレントになってから改名したんだよ。本名は花田勝のままなんだが、ま、芸名というか」
「風水占イカ何カノ関係デ変エタノデショウカネ」(なんだ、知ってんじゃねえか)
こういう漢字を書いたらこう読まなきゃならない、という厳密な決まりが実は日本語に全くない。その真相と功罪に、次回以降は迫りたいと思っているのだが・・・ヘルマンの追及に応じ切れる自信は、これまた全くない。