高見順の詩「黒板」

f:id:yanakaan:20180308121357j:plain

病室の窓の/白いカーテンに/午後の陽がさして/教室のようだ

中学生の時分/私の好きだった若い英語教師が/黒板消しでチョークの字を/きれいに消して/リーダーを小脇に/午後の陽を肩さきに受けて/じゃ諸君と教室を出て行った

ちょうどあのように/私も人生を去りたい/すべてをさっと消して/じゃ諸君と言って

 

最後の詩集「死の淵より」(1964年)所収の一編だ。治五郎も(食道癌で死期が迫っているわけではないが)ようやく、こういう詩の味が分かるようになってきた。

高橋順子編・解説「日本の名詩を読みかえす」を借りている荒川区立尾久図書館から電話がかかってきたので「あっ、返却期限が過ぎているから督促だな」と思って謝りかけたが、そうではなかった。

「ご予約をいただいている高見順の『昭和文学盛衰史』上下2巻ですが」「はあ」「区内の図書館にあるものは、上巻の方が損傷していて貸し出せる状態ではないんですよ」「はあ」「今、ほかの区に問い合わせてますので、少しお待ちいただけますか」

我が国の図書館は、そこまでしてくれるのか! とワシは感動を覚えたのであった。