「無欲」という生き方

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「誰だこれは。相撲取りらしいということは分かるが、テレビ中継では見たこともないぞ。誰か関取の付け人なんだろう。治五郎は将来性を高く買ってるのか」

「いや、ワシも知りまへん」

「な、なんや、知らんのかいな!」

「知らんねんけど・・・(間)・・・今場所、三段目で優勝したらしいわ」

初めて幕の内で連続優勝を遂げた横綱鶴竜や、大関昇進を決めた関脇・栃ノ心にはマスコミの「一夜明け会見」というのが待っているが、三段目で優勝したぐらいでは、そう騒がれることはない。

この力士は、(調べによると)西の三段目49枚目の「唐津海」という。佐賀県唐津市出身、玉ノ井部屋。29歳。三段目優勝で、1年ぶりの幕下復帰が確実になったようだ。

唐津海の優勝インタビューが、ワシの心をワシ掴みにした。

「幕下に戻れそうですが、今の気持ちは?」と、聞かれて「来場所が心配です。胃が痛い」と大らかに笑ったという。「今後の目標は?」の問いには「これといってありません」。面白い男ではないか。ワシゃ好きだねえ、こういうタイプ。

29歳といえば、普通の力士は心身共に最も充実する時期だ。玉ノ井部屋では「ちゃんこ番」を務めていて味には定評があるらしいが、それでいいのだろうか。

よく知られているように、幕下以下の力士には給料が出ない。食費や部屋代、光熱費はタダだから、ワシなどは少しうらやましい気もするが、大部屋暮らしの彼らにはプライバシーもヘッタクレもない。それでいいのか。彼女が出来たらどうするのだ。結婚なんて、夢のまた夢だろう。(あ、ワシが心配するような話ではありませんでした)

幕下以下の力士は何百人も存在する。40代で序二段という人もいる。世間の風が冷たいのではあるまいか。引退して小さなチャンコ屋を開店しようにも、資金が必要だろう。その蓄えはあるのか? (あ、また出過ぎた心配をしました)