「うれしいと眼鏡が落ちるんですよ」
という、オロナミンCのコマーシャル=写真=が昔あった。アナタが自分の年齢を実際より若く見せたいなら「あ、知ってる」とか「懐かしい」とか言わない方がいい。
このCMで全国的に知られるようになった大村崑(1931~)は、もともと関西限定で活動してきたタレントなので、中高生時代を東北で過ごした治五郎には馴染みが薄いのだけれども、上の画像をみれば「あ、懐かしい」と思う。
今でも地方を旅すると、後継者が絶えて廃屋となって久しい元商店の軒先などに、この看板が朽ち果てて残っているのを見かけることがある。琺瑯引きである。
ほうろう【琺瑯】▵金属器(陶磁器)の表面に焼きつける、ガラス質の不透明な うわぐすり。また、それを焼きつけた物。瀬戸引き。【ー引き】金属器の表面に琺瑯を焼きつけること。また、そのようにした金属器。光沢が有り、丈夫で腐食しにくい。
いくら丈夫で腐食しにくくても、半世紀以上も風雨にさらされればズタズタ、ボロボロになる。(保存状態がいいものは、骨董価値が高まっているらしい)
大村崑がテレビに出演することは滅多になくなり、近年は死亡説(デマ)に接することもある。「生きてりゃ87歳か。死んでても不思議じゃないなあ」と思われても当然だろうが、大相撲ファンに限っては、そんなデマに惑わされることがない。
毎場所のように、彼が「砂被り」で観戦している姿をTVで目にするからだ。
すなかぶり【砂被り】〔すもうで〕土俵のすぐそばの見物席。
東京場所や大阪場所なら分かるが、彼は今場所(九州)にも行っている。席は向こう正面を選んでいるようだから、見たくなくても目立つ。ピークを過ぎた芸能人の〝営業〟なのだろうか。念入りな若づくりの成果もあろうが、とても87とは思えない。
琺瑯引き看板よりズタズタ、ボロボロの治五郎は、なんだかタメ息が出るのである。
うれしいと(顔の筋肉が緩んで)眼鏡がずり落ちるという経験は、ワシにもあった。今は、眼鏡そのものが無用だ。(遠くの物も近くの物も、あまりハッキリ見えない方が美しいと思う)