ある賢い小学生との対話
「ねえねえ、ご隠居さん」
「何だね」
「普通の人が国を相手に損害賠償裁判を起こすことがありますよね」
「あるけど・・・例えば?」
「騒音公害とか冤罪被害とか、例は幾らでもあるでしょう」
「うん、それで?」
「裁判で国が負けると、何億とか何千万とかのお金を払わなければなりませんよね。そのお金は、どこにあるんですか? 基は国民の税金なんでしょ?」
「まあ、そうだけど」(厄介なガキが現れたなあ)
「うちの貧しい両親が、ごくごく一部とはいえ、どうして失政の尻拭いをしなければならないんでしょうか。ドン!」(それはワシが言いたいんだ。ドン、ドン!)
「ところで、ご隠居さんは森鷗外の『最後の一句』を読んだことがありますか?」
「う~ん、何だっけ。誤審で処刑される父親の身代わりを申し出た娘が、死を前にして見事な俳句だか川柳だかを作ったんだったか何だったか、そんなような・・・」
「ブー。彼女は、役人たちの前で『お上の事には間違いはございますまいから』と言った。居並ぶお偉方は皆、この一言にノックアウトされたのです」
「ああ、そうだったそうだった」(しかし、このガキは何者だ? 末恐ろしい)