宮沢章夫「考えない人」を味読する

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 知ってますか? 宮沢章夫(1956年生まれ)。

 治五郎は残念なことに、演劇というものに疎い。かつて岸田國士戯曲賞を受賞した劇作家・演出家だと聞いても、どのくらい偉い人なんだかよく分からない。

ただ、文章の面白さは「牛への道」「わからなくなってきました」を読んで以来、「これは東海林さだおに匹敵する逸材だ」と確信するようになった。ショージ君といったらアンタ、治五郎が30歳の頃から「一に百閒、二に江國、三、四がなくて五にショージ」と崇め奉ってきた日本屈指の名文家である(百閒は内田百閒、江國は江國滋)。その第5位を脅かしそうな存在なのだ。

 

プロ野球の中継で、大差をつけられて劣勢のチームに連打が飛び出し満塁になったりした時、アナウンサーが叫ぶでしょう。「さあ、わからなくなってきました!」

この「わからなくなってきました」に宮沢章夫は鋭く反応し、トコトンこだわるのである。想像の翼が、とめどもなく広がる。「もし、たまたま乗ったタクシーの運転手が同じ言葉をつぶやいたら・・・」これは、かなり不気味である。怖い。

今、久しぶりに宮沢のエッセー「考えない人」=写真はロダンの「考える人」=を読んでいる。例によって、億劫だから内容は紹介しない。パラパラとめくって「なんだ、ばかばかしい」と感じる人は、ゴルフでもして来なさい(連休中だし)。

しかし当ブログを読むような変人には、一読を薦めたい。(新潮文庫で読めます)

 

読了後の補足:「私は治五郎さんほど暇じゃないんですが」という人(特にプロ野球のことが多少は分かる人,、いや、むしろ野球のヤの字も知らない人)は、巻末に載っている「二〇〇二年十月十七日(木)」という文章だけでも立ち読みしてほしい。一見、相変わらずの「おかしなおかしなエッセー」には違いないが、これは上質な短編ミステリーだと思う。いや、感服した !