御社・弊社・拙者

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<読者のみなさまへ 本紙購読料改定のお願い>という一面社告が、12日の読売新聞朝刊に載った。

 <読売新聞社は1月1日から、朝夕刊セットの月ぎめ購読料を現在の4037円(消費税込み)から363円引き上げ、4400円(同)に改定いたします。>

「う~む、やはり相当に苦しいのだな」とは、同社OBだけに納得できるような気がするのだけれども「改定のお願い」とは、いかがなものだろうか。

「改定させてほしい」ではなく「改定します。ごめんね」という趣旨だから、正しくは「改定了承のお願い」だろうが、まあ、文字数の節約が新聞の宿命ではある。

 本体価格(税別)の値上げは25年ぶりだそうで、販売店の経営難や人手不足などの事情を考えればよく頑張った方だろう。新聞社は、どこも値を上げる前に音を上げていた。日経に続いて読売が値上げに踏み切ったからには、他もすぐ追随するはずだ。

現在の読売新聞本社=写真①=を、治五郎は知らない。一度も入ったことがない。初任地を除く約30年を旧社屋=写真②=で過ごした。定年退職を迎えた2013年当時の居場所は東銀座にあった仮社屋で、そこは直前まであの「日産」の旧社屋だった。

 自分が強く望んだことだとは言え37年間、ワシは編集局以外に勤務した経験がない。新聞社も営利企業だから、販売・広告など多くの部局があって、そこでは一般の企業と同じように「御社」「弊社」という言葉が飛び交う「商い」の現場なのだが、ワシはそういう自覚が皆無。原稿を書くこと以外に何の興味も取り柄もない。

 もしも編集を離れて他の部署に異動させられていたら早晩、心身症鬱病になっていたに違いないが幸い、そうはならずに初期認知症を迎えることが出来た。それもこれも、スポンサーに平身低頭して広告を取る営業マンや、雨の日も風の日も新聞を配達する販売店があるお陰だということは、ワシもよく理解していた。

 新聞経営は今後ますます、厳しい環境に置かれることは避けられまい。他人事のように言っていてはいけないのだろうが、ワシにはどうすることも出来ない。