やるせなき治五郎親方の名古屋場所総評

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 〽 まぼろしの

   影を慕いて 雨に日に

  月にやるせぬ 我が思い・・・

昭和歌謡界の大御所・古賀政男(1904~78)=写真左=の名曲「影を慕いて」の冒頭だが、この詞には昔から指摘されてきた文法上の大きな誤りがある。「やるせぬ」の問題だ。

【遣(る)瀬】〔「瀬」は浅瀬の意で、立つことが出来そうもない深い淵に対して、心の安らぎが得られるところを言う〕【―無い】心の内の苦しさや悲しさをまぎらわすものがなく、暗澹たる気分に陥る様子だ

「遣る瀬」が「無い」のであって、「やるせる」という動詞(そんなものはない)の否定形ではないのだ。「許せぬ」は許せるが、「やるせぬ」は許されぬ。

話は変わるが(変わりすぎか)バナナ=写真右=と言えばフィリピンであり、フィリピンと言えば長野県上松町在住の大道マルガリータさん(48)の祖国である。彼女には久司君という息子がいて毎日、大好物のバナナを食べて大きく育った。

 それが大相撲の関脇・御嶽海(25)で、平成最後の名古屋場所で優勝することになった(13勝2敗)。長野県出身では初の快挙だから、地元は大騒ぎだ。

ワシも祝福するにヤブサカではない。が、今場所は休場者が多すぎて本場所の体をなしていなかった。FIFAならぬNSK(日本相撲協会)のランキングでは、①鶴竜白鵬稀勢の里豪栄道⑤高安⑥栃ノ心逸ノ城で、御嶽海は8位だった。

それが、横綱(①~③)は三人とも休場、大関(④~⑥)のうち⑥も休場。カド番の④と⑤、それに関脇(東)の⑦は勝ち越すのが精いっぱい。上位に有望力士がいないのだから、ナンバー8の御嶽海が優勝するのは当たり前だろう。(なんだ、つまらん)

陸上競技に「追い風参考記録」というのがあるが、今年の名古屋場所は「参考優勝」とでも呼ぶしかあるまい。(治五郎親方の目は厳しいのだ)

来場所の〝大関獲り〟が取りざたされる御嶽海だが、実現は容易ではない。今場所の敢闘賞が光った豊山、朝乃山に加え、ワシが「咲勝(しょうしょう)時代」を予見した阿武咲、貴景勝も、立ち上がりは不調だったが終わってみれば10勝している。

浮沈の激しい大相撲の世界。特別扱いの横綱を除いて、大ケガで休場が続けば〝転落の人生〟が待っている。元大関照ノ富士なんか、どこへ行ってしまったのだ?

治五郎親方は「遣る瀬ない」のである。